キリストの聖体
ベトナムのカトリック教会を代表する人物の中で「グエン・ヴァン・トゥアン枢機卿」がいます。1953年に司祭叙階を受け、1975年にサイゴンの大司教になりましたが、共産政権によってサイゴンが陥落した後、彼も逮捕され、およそ13年間収容所の中で生活をしました。収容所に閉じ込められているにもかかわらず信仰を守るために行っていたその時の彼の活動を見ると、聖体の秘跡がどれくらい大切なものなのかを黙想することができます。次はグエン・ヴァン・トゥアン枢機卿が残した記録の一部です。 「私が逮捕されたとき、何も持たずに出なければなりませんでした。翌日、必要な衣類と歯磨き粉を渡され、手紙を書くことが許可されました。そこで私は信徒たちに『胃腸薬として使うぶどう酒を送っていただけませんか』という手紙を書きました。幸いにも彼らはすぐにその意味を理解しました。彼らは小さな瓶にミサ用のぶどう酒を入れて『胃腸薬』というラベルを貼り、私に送ってくれました。また、湿気ないように聖体を渡すために、懐中電灯の中にそれを隠して届けくれました。そのときの喜びは、言葉では言い尽くせませんでした。その後私は木片で十字架を作り、毎日手のひらに三滴のぶどう酒と一滴の水を落としてミサを捧げました。そこが私の祭壇であり、大聖堂でした」という記録です。
グエン・ヴァン・トゥアン枢機卿は収容所の中でも、夜になって電気がすべて消えた後に、自分のベッドを聖堂と、自分の手のひらを祭壇として、わずかなぶどう酒とホスチアでそこにいる信徒たちと「ミサ」という教会の中で最も大切な祈りを捧げたのです。
ちなみに懐中電灯でもらったホスチアは、タバコの箱の紙で小さな袋を作り、その中に保管したそうです。つまりタバコの箱の紙で作った小さな袋は聖櫃となったのです。このことについてグエン・ヴァン・トゥアン枢機卿は、むしろその収容所の中で人々はより熱心なキリスト者になって、日々神に感謝し、賛美する祈りを捧げたと回顧しました。
このように神様は、想像もできない方法で収容所の中の枢機卿と信者たちを助けてくださいました。聖体の秘跡はこれほど大切なものです。絶望に陥って暗闇の中で迷っている時に、何の希望も感じることができない時に、聖体は私たちを救う光となってくださるからです。そしてこの光は、私たちが主と出会うための道を照らし、導いてくださるはずです。
私たちは今、自分の信仰を自由に現すことができる時代に生きています。それでは私たちは今、イエス様の唯一のいけにえであるその聖体をどれくらい大切にして拝領しているでしょうか。イエス様の聖体を通して注がれる神様の満ち溢れる恵みに感謝しながら、より頻繁に、より誠実にミサに与ることができるためのイエス様のみ言葉でこの文章を終えます。「これは、あなたがたのための私の体である。私の記念としてこのように行いなさい。」
